今、新聞・テレビ、そしてインターネットから24時間流れてくる玉石混交の情報の洪水から、ゴミ情報ではなく自分にとって本当に有益な情報だけを探し出し分析する力、「情報分析力」が、ビジネスマンはもちろんすべての人に求められています。
本書は、「情報を読み解く力を身につけるために」と題した講義編と、2013年2月末から今年6月までの実際の情報を分析して解説した実践編の2部構成です。
講義編は「ビジネスパーソンが身につけるべき情報分析力とは」「重要なことはパソコンに保存しない」「「スーパースパイ」ではないCIA諜報員のノウハウ」「「エボラ出血熱」から何を読み解くか」といったテーマで情報分析力について説明され、筆者の情報分析術が伝授されます。さらに実践編では、ロシア、アジア、中東、アメリカや日本、外務省で起きている事件を取り上げながら、その情報の分析の仕方を具体的に解説しています。
第2部実践編は著者が「週刊アサヒ芸能」に2013年2月25日~2014年6月18日の期間に連載した軍事コラム「ニッポン有事!」をまとめたものなので、読み物としても非常に面白い内容となっています。
ポイント抜粋
重要なのは、「他人(の情報分析)の上に乗っかること」です。信頼できる専門家の分析から学べばいい。
情報を分析できる人とは、情報の「文法」をわかっている人です。言語を学ぶ場合、まず文法をマスターし、あとは語彙を増やしていけばいいのですが、情報分析も同じことが言えます。
政府の発表は、積極的な騙しとしての嘘ではなく、事実をすべて書かないことによって、国民を誤導することがあるのです。
「総合知に対立する博識」という中世ヨーロッパの格言がありますが、細かいデータを記憶しても、それは「教養」にはつながらない。
筆者の場合、重要な記事が出ている新聞をページごと破り取って袋に入れたら、一定期間寝かせる。その期間は一カ月。一カ月が経ったら内容を精査して、今後も長期間参照することになりそうな記事だけを保存するのです。
お金のかからない語学学習法としては(海外赴任する場合を除く)、高校の英語教科書を徹底的に復習するのが一番です。
数学の知識によって、論理の崩れを知ることが目的となります。数学アレルギーがある人は、まず小室直樹『数学嫌いな人のための数学』(東洋経済新聞社・2001年)を読むといい。また、野矢茂樹『論理トレーニング101題』(産業図書・2001年)を通読すれば、国際基準でのディベートに対応することができる論理力がつくでしょう。
松本保美編『理解しやすい政治・経済改訂版(シグマベスト)』(文英堂・2008年)を
私の「情報分析術」超入門: 仕事に効く世界の捉え方
内容紹介(「BOOK」データベースより)
情報エリートの脳力は報道、公式会見のどこを読んでいるのか!?人、国家、お金、思惑…世界の動きをつかむ佐藤式「情報分析」の実践。
目次(「BOOK」データベースより)
第1章 講義篇ー情報を読み解く力を身につけるために
- ビジネスパーソンが身につけるべき情報分析力とは
- 官製メディア情報の「裏」にあるもの
- 政府の公式サイトは「積極的な嘘」をつかない
- 「仕事に必要」か、「教養の強化」か
- 複数紙を読んで総合的な情報理解を
- 朝日新聞に多い、官庁人事に関与する「妖怪記者」
- 情報は無料で読むべきか、有料で読むべきか
- スクラップブックのすすめ
- 教養を身につける「手書きのノート」
- 重要なことはパソコンに保存しない
- テレビの情報と「マクルーハン理論」
- 情報を歪曲させる「芥子粉」「ふくらし粉」を見抜く
- 基礎教養を身につける高校生向け学習参考書
- インターネットとインテリジェンス
- 「スーパースパイ」ではないCIA諜報員のノウハウ
- 情報を扱う者の鉄則は「嘘をつかない」
- 国際社会の変化を見通すために
- 「エボラ出血熱」から何を読み解くか
- ピンチをチャンスに変える情報分析力
第2章 実践篇1-「ロシア」を分析する
- 2年後にはいないオバマをとるか、10 年先もいるプーチンか
- プーチンが語った「引き分け」の意図を読む
- 「極東管区大統領全権代表」の分析ミス
- 国営ラジオは、なぜ日本人外交官の裁判を報じたか
- 「対イラク武器販売」報道から外交ゲームを俯瞰する
- ロイター通信「ロシア政府内人事異動」報道の真相
- 政権黒幕の抜擢が領土交渉に与える影響
- プーチンの離婚は、なぜこのタイミングだったか
- 元CIA職員へのロシアの対応から見えるもの
- 色丹島村長の台詞に「情報戦」の端緒を見る
- 日露元外交官の共同論文は領土交渉進展の鍵
- 五輪直前に「同性愛宣伝禁止法」を語った思惑
- 日露プラス2プラス2会合の「対中国牽制」という腹案
- なぜ私は、あえて「小説」で領土交渉を書いたか
- ウクライナ問題にはロシアの「制限主権論」がある
- 「住民投票」は北方領土でも行われるか
- プーチン「クリミア併合」は帝国主義宣言だ
- クレムリンに近い機関からの独自情報を読む
- 露誌編集長がイランとの接近を公言する狙い
- 欧米に引きずられた日本のウクライナ報道
- 外相のロシア訪問延期でも、なぜ日露関係は良好か
- 必要以上にロシア警戒感を煽る某教授の思惑
- 琉球新報はウクライナ問題を沖縄等身大で解いた
第3章 実践篇2-「日本」を分析する
- 日本の政治は公明党の視座で読む必要がある
- 沖縄地元紙から読み解く中央政府との違和感
- 猪瀬直樹の暴言と「東京五輪テロ」の危うさ
- 橋下市長と提携した沖縄地域政党のブレ
- 橋下市長の「慰安婦発言」をロシアの文脈で解く
- 「政商評論家」と筆者を名指しで罵る者へ
- 沖縄地域政党そうぞう代表に筆誅を送ろう
- 琉球新報による「琉球語」普及と継承の意味
- 参院選沖縄選挙区での自民党敗北と沖縄の本音
- 日活100周年記念映画と「高齢者食い」の実態
- 「東京五輪決定」は北方領土に肯定的な影響
- 特定秘密保護法で北方領土交渉担当官に衝撃
- 辺野古移設問題から東京の政治エリートの無理解を読む
- 石破茂「デモ=テロ」発言で揺らぐ、日本の国家統合
- 森喜朗元総理の著書で知る、領土交渉を邪魔する奴ら
- 辞任で失った猪瀬直樹「職業作家」の価値
- 中国の反日包囲網の狙いは安倍政権の世界的孤立
- 名護市長選で辺野古移設阻止派再選の意味
- NHK籾井会長の「飾り窓発言」をオランダの反応で読む
- 松井大阪府知事の沖縄軽視から見える差別観
- 沖縄選出の参院議員が安倍政権の爆弾になる
- 「基地集中は構造的でない」地元議員が語った愚
- 百田尚樹「イラン訪問記」がもたらす面倒なこと
- 「私に恨みがあるのか!」と筆者を批判する者へ
- 集団的自衛権は創価学会が最も正しく事態を読んでいた
- 創価学会の主張から「政教分離」を再考する
- 情報収集には「ゴミ漁り」という手段もある
第4章 実践篇3-「外務省」を分析する
- 外務官僚個人の「出世欲」で見極める外交の成否
- 官僚の練炭自殺から見えた「辻褄合わせ」の闇
- 村上春樹の小説で読み解く「エリート」の定義
- 「赤ちゃんプレイ男」が公務員研修所で復帰の珍事
- 日露次官級協議でのバランスの取り方は絶妙だった
- ロシア高級紙記者をメイド喫茶にアテンドした意図
- 元外務審議官が急に右傾化発言する狙いとは
- 竹島・尖閣の公式広報動画は日本を不利にする
第5章 実践篇4-「アジア・中東」を分析する
- 排外的ナショナリズムで見てはならない隣人たち
- 北朝鮮は「共感」を探すことから見えてくる
- サウジはなぜ国連安保理非常任理事国入りを拒んだか
- 中韓が反日共闘する危険と小泉元総理「原発ゼロ」の相関
- 北朝鮮№2がアントニオ猪木にだけ語った身の危険
- イスラエルを旅して見えた米露間「綱渡り外交」の見事
第6章 実践篇5-「アメリカ」を分析する
- 「ドラえもん」を読めばアメリカが見えてくる
- ボストン爆弾テロで米露情報機関は急接近する
- シリア問題で理解する米露インテリジェンス戦争の勝敗
- 米国は「露大統領公式サイト」から本気の喧嘩を売られた
- 反米主義の陰謀論者とシリアからの情報操作
- スノーデンが暴露したのは機密情報だけじゃない
あとがき―「情報」とは日本国民と国家が生き残るためのもの
参考になった書評記事
ギックスの本棚/私の「情報分析術」超入門 仕事に効く世界の捉え方(佐藤優|徳間書店) | GiXo Ltd.