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『世界を変えた10冊の本』「アンネの日記が世界を変えた」とはどういうことか

池上彰さんが選んだ『世界を変えた10冊の本』は

  1. アンネの日記(アンネ・フランク)
  2. 聖書
  3. コーラン
  4. プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(マックス・ウェーバー)
  5. 資本論(カール・マルクス)
  6. イスラム原理主義の「道しるべ」(サイイド・クトゥブ)
  7. 沈黙の春(レイチェル・カーソン)
  8. 種の起源(チャールズ・ダーウィン)
  9. 雇用、利子および貨幣の一般理論(ジョン・M・ケインズ)
  10. 資本主義と自由(ミルトン・フリードマン)

です。池上さん自身も本書の中で述べられているように、『アンネの日記』を含めているのが特徴的です。どんなに歴史的な価値があるといっても、これは一人の少女の日記にすぎないからです。

池上さんの説明を読んでみます。

一人の少女の日記が、国際社会を動かした

 なぜ、この本が「世界を変えた」のかと疑問の方もいらっしゃることでしょう。中東問題の行方に大きな影響力を 持っているから、というのが、私の答えです。

 一九四八年五月、アラブ人が多数居住するパレスチナの地に、ユダヤ人国家であるイスラエルが建国されまし た。国連が、ユダヤ人たちの「自分たちの国家を建設したい」という要望を受け入れて、パレスチナを「ユダヤ人の国」と「アラブ人の国」に分割する案を採択したのにもとづくものでした。ここから中東問題が始まります。

 イスラエル建国に反対する周辺のアラブ諸国との度々の戦争を経て、イスラエルは、国連が採択した「ユダヤ人の国」の範囲を超え、パレスチナ全域を占領しました。

 これにアラブ諸国が反発し、中東問題は、こじれにこじれています。しかし、アラブ諸国以外の国際社会は、あまりイスラエルに対して強い態度をとろうとしません。ユダヤ人が、第二次世界大戦中、ナチスドイツによって六〇〇万人もの犠牲者を出したことを知っているからです。

 その象徴が、アンネ・フランクであり、彼女が残した『アンネの日記』です。『アンネの日記』を読んだ人たちは、ユダヤ人であることが理由で未来を絶たれた少女アンネの運命に涙します。『アンネの日記』を読んでしまうと、イスラエルという国家が、いかに国連決議に反した行動をとっても、強い態度に出にくくなってしまうのです。

 イスラエルが、いまも存続し、中東に確固たる地歩を築いているのは、『アンネの日記』という存在があるからだ、というのが私の見方です。

『アンネの日記』があるから、国連決議に反した行動をとるイスラエルに対して強い態度に出にくくなってしまう、というのは今まで聞いたことがないユニークな主張だと思いました。

その是非については、いろいろな意見があると思いますが、歴史を研究し自分独自のユニークな解釈を作り上げることができるという点は、さすが池上さんだなという感想を持ちました。

芥川賞受賞作『乙女の密告』の題材にも

  二〇一〇年の第百四十三回芥川賞受賞作は、赤染晶子さんの『乙女の密告』でした。ここで扱われているテーマも、『アンネの日記』です。

 京都の外国語大学を舞台に、ドイツ人教授の指示で、『アンネの日記』の一節を暗誦する課題を出された女子学生たちの行動が描かれています。

 風変わりなドイツ人教授のゼミに所属するのは、全員が女子学生。教材に『アンネの日記』を使用しているからです。赤染さんは、こう書きます。「乙女に最も人気のある本だ」と。

  主人公の「みか子」が覚えていたアンネは、「可憐な少女である。ロマンチックな悲劇のヒロインである」はずだったのですが、ドイツ人教授の指示で暗誦することになった箇所を読むことで、もうひとり別のアンネに出会うことになります。それが、ユダヤ人としての自覚を持つようになっていくアンネの姿でした。

この後、『アンネの日記』が出版されるまでの背景やユダヤ人差別の歴史、一般的なイメージと異なるアンネの姿が説明されていくことになります。

これ以降の9冊は、

 

  • 聖書 世界最大のベストセラーで、欧米キリスト教社会を形成してきた。
  • コーラン キリスト教徒同じ神を信じるイスラム教徒の聖典
  • プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 宗教が私たちの生活に思いもかけぬ形で影響を与えることを明らかにした。来世での永遠の命を希求する行動が、強欲な資本主義の精神を築いたとする理論
  • 資本論 資本主義の非人間性を明らかにした
  • イスラム原理主義の「道しるべ」 オサマ・ビンラディンの極端な思想が、どのようにして形成されたかがわかる本。
  • 沈黙の春 私たち人間の思い上がりが、環境を破壊し、それは回りまわって、私たちの生活を破壊する。科学の力に対しても、人間はもっと謙虚にならなければいけない、ということを教えてくれる本
  • 種の起源 『旧約聖書』の中の「創世記」の内容を科学的に否定した本
  • 雇用、利子および貨幣の一般理論 マルクスが暴いた資本主義の悪を、理性的な経済対策で抑えることができる道筋を示す
  • 資本主義と自由 賛否両論が渦巻いた経済理論

と紹介されています。

確かに内容を知っておいて損がない書物、むしろ読まなければいけない書物ですね。

世界を変えた10冊の本

内容の紹介

『聖書』『種の起源』『資本論』から、『アンネの日記』や話題の“プロ倫”まで。それまでの常識を180度ひっくり返し、今につながる歴史を作った世界の 重要書物10冊を、池上さんが鮮やかに解説します。もととなったのは、女性誌「CREA」の昨年12月号から10回にわたる連載。「書物から得る教養は、 未来を切り開く力となる」というメッセージは、3・11以降なおいっそう色濃くなり、読むと心に強靭な柱が生まれるような本となっています。(担当編集者より - 文藝春秋BOOKS)


今こそ、書物の力を見直したい 『世界を変えた10冊の本』 (池上彰 著)|自著を語る|本の話WEB

目次

はじめに

第1章 アンネの日記
第2章 聖書
第3章 コーラン
第4章 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
第5章 資本論
第6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」
第7章 沈黙の春
第8章 種の起源
第9章 雇用、利子および貨幣の一般理論
第10章 資本主義と自由

おわりに

アンネの日記

乙女の密告

永遠のアンネ・フランク